筑波大学40周年記念 国際シンポジウム「トップアスリートのセカンドキャリアを考える」に参加してきました。
(1)ヨーロッパからみた日本のセカンドキャリア問題
ライトナー・カトリン・ユミコ氏 (ウィーン大学博士課程)
(2)韓国の競技スポーツ制作とセカンドキャリア問題
朱 成鐸氏 (慶熙大学客員教授)
(3)地域密着型広島東洋カープ選手のセカンドキャリア
衣笠 祥雄氏 (野球評論家)
いずれも、ご自身の経験を踏まえた学術的なお話で大変興味深い内容でした。
衣笠さんのお話の中で、ゲイル・ホプキンスさんのお話が興味深かったのでご紹介します。
ホプキンスさんは、1975年の広島カープ初優勝時のメンバーで、現役引退後、医大に通い現在は整形外科医としてオハイオ州で開業しているそうです。そんなホプキンスさんは広島カープ時代、試合前に広島大学の研究室に通ったり、ロッカールームで医学書を読んだりしていたそうです。
「海外では、そういう前例があったけれども、日本では前例がない。」
確かに、プロ野球引退後に医者や弁護士、会計士になったという話は私が知る限りではありません。プロサッカー選手で引退後、司法試験に合格した方や、バスケ選手で現役中に会計士の資格を取得したという選手はいらっしゃいますね。
その話を聞いているときに、メディア・トレーニングをさせていただいた中日ドラゴンズのドラ1・福谷浩司選手のことが頭に浮かびました。彼は、慶応大学理工学部で優秀な成績を残した、まさに文武両道の選手で、在学中に学会発表もしています。いくつかのインタビューでは「卒論を区切りに、野球だけをみていきたい」と答えているのを目にしましたが、是非研究も続けて‘前例’を作ってほしいなと。彼ならホプキンスさんと同じように野球をしながら研究も進めていける稀有な選手だと思うのです。
世界のスポーツ界では、現役時代からセカンドキャリアの準備を進める『デュアル・キャリア(ダブル・キャリア)』が主流になりつつあります。
「プロ野球選手は、現役時代はとにかく野球漬けで将来のことを考える時間がない」
という話をよく聞きます。確かに、他のプロ競技と比べて試合数が格段に多いのも事実です。人によって時間の使い方は違うと思うのですが、大学院在学中にお話を伺ったプロ野球OBの方は、自由になる時間も結構あったと話してくださいました。特に2軍にいる間は試合が日中なのでしっかり練習をしても夕方以降に時間があるという話でした。日本では、現役中に競技以外のことを考えることすらタブーという空気があるようですが、海外では、セカンドキャリアについて現役中に準備することで将来への不安を払拭することができ、競技成績が向上したとい研究結果もあります。
メディア・トレーニングも、海外では主にセカンドキャリア支援プログラムの一環として取り入れられています。日本の現状を把握しつつメディア・トレーニングを通じて、アスリートのセカンドキャリア支援の一助となれるようこれからも研究を続けていきたいなと改めて思いました。
NPO法人日本スポーツメディアトレーナー協会 糸川雅子