インタビューの「回避力」~ブリッジングとは~

2014年3月3日

2月28日 フジテレビ「とくダネ!」に出演させていただきました。フィギュアスケート・浅田真央選手の特集の中で、外国人記者クラブで行われた会見での対応についてお話させていただきました。

ポイントとして①シンプル ②ストーリー性 ③回避力 この3点を挙げ、そのうち③の部分がOAで紹介されました。

インタビュー(会見)では、時に答えるべきではない質問も飛び出します。スポーツで言うと、まだ公表されていない移籍に関する情報やチーム事情、ライバルチームに関すること、スポンサーに絡む発言など様々です。そんな時に、その質問に真正面から答えることなく‘回避’し安全地帯に着地するのが「回避力」です。

浅田選手の会見では、森元総理が「大事なときに必ず転ぶ」と発言してことに対し、

(記者)森会長で日本人は5年耐えられると思いますか?

という質問が飛び出しました。これは「Yes or No」で答えるクローズド・クエスチョンという質問なのですが、これを真正面から受け止めて「耐えられると思います/耐えられないと思います」で答えるとどちらであっても物議を醸します。どう答えないかというのもメディア対応の1つです。ここで、浅田選手は

(浅田選手)私はなんとも思っていないんですが、森さんは少し後悔しているのではないかなと思います。

と回答し各種メディアで取り上げられました。

メディア・トレーニングでは『ブリッジング』というテクニックがあります。‘答えづらい質問’と‘伝えたいメッセージ’をブリッジ(橋)でつなぐという意味です。伝えたいメッセージ(=キーメッセージ)がしっかりと自覚できていることが前提です。今回、キム・ヨナ選手とのライバル関係を例に

(記者)日本と韓国というライバル国同士がどうやったらうまくつきあえると思いますか?

という質問がありました。これに対し浅田選手は

(浅田選手)私からは何か言うことはできないと思います。でも、私とキム・ヨナ選手はライバルとして小さいときからメディアで注目されてきましたが、リンクを離れると普通にお話ししたり、普通の選手と友達のような関係だと思っているので・・・

この場合「でも」がブリッジです。まず、「私からは何か言うことはできないと思います。」と質問には答えられないという意思を簡潔に伝え、「でも」でつないでキム・ヨナ選手との個人の関係性に話を展開しています。浅田選手が意図的に回避したかはわかりませんが、長年の勘と自分の発言の影響力を鑑みて自然な流れですり抜けています。

話し方や表現方法は、ジュニア期の経験が大きく影響します。浅田選手は幼いころから数えきれない取材を経験し、自らの経験からより良い対応方法を身につけられたのではないかと思います。卓球の福原愛選手にも同じような印象を受けました。ただ、多くのアスリートは浅田選手や福原選手のようにメディア取材を複数回受け続けるわけではありません。だからこそ、メディア・トレーニングで様々なパターンに備えておくべきです。

メディア・トレーニングが日本のスポーツ界であたりまえの存在になるよう、活動を広めて行きたいと思います。
ご興味がある方はこちらから→ info@jsmt-sports.org

NPO法人日本スポーツメディアトレーナー協会 糸川雅子

 

 

 

 

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