研究者はメディア出演すべき?研究者のメディア・トレーニング

2014年3月24日

理化学研究所・小保方春子さんのSTAP細胞論文や小保方さん自身に注目が集まり、メディアを通じて研究者の方々がインタビューに答える姿を見る機会が増えました。理研の会見は、いわゆる不祥事対応で、言葉を1つ1つ慎重に選びながら発言する必要があったということもありますが、登壇した研究者と記者の間に、そして研究者と視聴者・読者の間に境界線があって、どこか‘特別な領域’の人達のように見えました。

研究は研究者の実績のためにあるのではなく、世の中にある問題を解決するためにあるはずです。研究が研究室や論文の中で終わってしまっては意味がありません。世の中に還元されて初めて研究は成就するのだと私は思います。そのためには、研究を広く知ってもらう必要があります。

先日、筑波大学で「研究広報」という、研究をより多くの人に知ってもらうための分野に関するセミナーがありました。
研究広報講演会「Reach Your Audiences よりよく研究を伝えるために」
http://www.tsukuba.ac.jp/event/e201402181630.html

大学院では、大量のスポーツに関する研究論文を読みました。自然科学系論文と違い世紀の大発見はスポーツにはないのですが、現状の問題を解決するような素晴らしい論文がいくつもあって、なぜ現場に生かされていないのだろうと何度も思いました。

うちの姉夫婦は共に理系の研究者ですが、正直2人が何を研究しているのかよく理解していません。詳しく話してもわからないだろうと向こうもあまり話しません。身内の間でも理解できないのにメディアを通して世の中に伝えるなどもってのほかです。

イギリスでは、科学者のためのコミュニケーション・トレーニング/メディア・トレーニングが活発で、世の中に広く「広報」するだけでなく、市民の科学への参加を促す活動の一環として行われています。
研究者のメディア・トレーニング
http://scienceportal.jp/news/review/36240/20090203.html

コミュニケーション・トレーニングでは「専門用語や不必要な技術用語を用いず、メッセージを明確に伝えるためのヒント」というトピックがあり、メディア・トレーニングには「議論が分かれる問題やプレッシャー下でのインタビューの受け方」というトピックがあり、今回のSTAP細胞をめぐる会見にはもってこいのプログラムです。

重要なのは「市民の科学への参加を促す活動の一環」という視点です。インタビューを「市民のスポーツへの参加を促す活動の一環」と理解して対応できるアスリートを増やすことが我々の役目です。税金を使って研究しているのだから、説明責任がある。ということもあるのでしょうが、自分達の研究や自分達自身について、広く知ってもらうことで理解と支援が得られる、そして、すそ野が広がり優秀な人材が育つ。研究もスポーツも同じなんだと思います。

NPO法人日本スポーツメディアトレーナー協会 糸川雅子

 

 

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