「ファンの皆さんの応援のおかげで勝つことができました、ありがとうございます」
こういうインタビューを良く耳にします。
「誰かに教えられたかのように紋切り型」
という指摘を受けることもあるのですが、メディア・トレーニングでこういった内容を教えることはありません。むしろ、こういう発言を教えるトレーニングを受講したのであれば、もはやそれはメディア・トレーニングではないと断定して問題ないと思います。
教えられたから紋切り型なのではなく、教えられてないから耳で聞いた誰かの言葉をコピーしてそのまま使ってしまうのです。
いくつかの競技団体でオリンピックのインタビューでは必ず誰かしらに対する感謝の気持ちを述べるようにと指導されたということはあったようですが・・
感謝の気持ちを伝えることを否定しているのではありません。「応援ありがとうございます」だけが感謝の言葉ではなく、いろいろな形で感謝の気持ちを伝えることはできるということです。自分の経験を世の中に還元することで多くの人の人生に影響を与えることができれば、それが応援に対する感謝に値すると私は信じています。
先日、元トップアスリートで現在ジュニア世代の指導者をしている知人に仕事の相談をしていると
プロの選手でも、体調が万全なときは年間で1ヶ月もない。
万全のときにいいプレーができるのは、当たり前。
調子が悪くても、その中で最高のプレーをするのがプロだよ。
と言われ、とても刺激を受けました。この言葉は怪我が多く、移籍を繰り返した彼だからこそ言える言葉で、アスリートだけでなく様々な職業・立場の方の人生にも役立つ意識だと思います。
私は思うのです。
「ファンのみなさんの応援のおかげで勝てました。」といわれるよるも、上記のように人生に役立つメッセージを返してくれたほうが応援した甲斐ある、と。そして、それこそがスポーツの、アスリートの存在価値なのではないかと。
私は仕事柄トップアスリートに直接話しが聞ける。みんな、いい言葉を持っている。それをメディアを通じてスポーツファンやそうでない多くの人に伝えてほしい。それが私の願いです。
NPO法人日本スポーツメディアトレーナー協会 糸川雅子